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2011年3月10日 (木)

世界の終わり方その1 拉致

 世界の終わり方その1 《事件》の続き

世界の終わり方その1 第4話

午前中は最近発売されたフィジカル・レビュー誌の平行宇宙に関する論文を読んでいた。

ふと窓を見ると昼間だというのに薄暗くなっている。

悪い予感はしたのだが仕方がないので、窓を開けて空を見た。

そこには例のUFOがいた。

やれやれと思いつつ振り向くと予想通り、男達が少し離れたところに立っていた。

「先生、我々についてきてもらえますか」

「いやと言ってもいいのかね」

「無駄ですね、先生には特に注意するように指示を受けていますので、この近辺の時空は全て封鎖しています」

「そうかな?」

世界が暗転した。

男達の会話が聞こえる。

「記憶を失っているんじゃないのか」

「いや、そのはずなんだがいずれにしても逃げられるはずがない」

「やつが記憶を取り戻していたら、まずいぞ」

「今までだってこれぐらいの包囲網を平気で逃れていたんだろう」

「いや、やつは自分が何者か解ってないはずだ」

不思議な会話が行われている。

・・・いったい何が起きているんだ。僕はなぜこんな状況で落ち着いていられるんだ。

UFOを見る直前からの僕はおかしい・・・

・・・まるで僕は彼らの正体を知っているみたいだ・・・

「あわてるな。  説明してやるから落ち着けるところに移動しようじゃないか。  今来ている連中は雑魚だ。  たいした連中じゃない」

頭の中に、声が聞こえた。

「誰だ!」

「黙るんだ。俺のいうことを聞いてゆっくり歩け。ほら、向こうに明るいところが見えるだろう」

それは扉だった。

開けて中にはいるとそこは少し古めかしい酒場だった。

・・・ここはいったいどこだ・・・

「20世紀前半のアメリカ、シカゴだよ。カウンターで酒を頼むんだ!」

・・・こんなところに日本人がいたらあやしまれるんじゃないのか。・・・

「つまらない心配をするな、おまえは周りの連中には白人にしか見えないし、言葉も周りの連中と同じだ」

「お前に気がつくやつはいやしない」

訳のわからないまま、バーテンに酒を頼んだ。

「いいか、会話は頭の中だけで、行う。声には出すなよ」

「店の連中に話しかけられても自然に振る舞え」

「おまえを追跡している連中はあらゆるところに網を張っているからな」

・・・ここは安全なところじゃないのか、そういっただろう・・・

「安全なところなんかどこにもない。ここは比較的安全だということだ」

・・・今まで、子供の時から、特別、変わったこともなくすごしてきたのに、なぜ急に訳のわからない連中に追いかけ回されなくちゃならないんだ・・・

「それはおまえがそう思っているだけだ」

「おまえは覚えていないだろうが遙か昔から連中に追いかけられているんだよ」

・・・捕まるとどうなるんだ・・・

「さあな。たぶん、原子に還元されるんじゃないか」

・・・今まで捕まったことはないのか・・・

「あるよ。何度も原子に還元されてる」

・・・何だって、どういうことだ・・・

「それよりここを出よう、もうすぐ、ここでパニックが起きる」

・・・死人が出るのか・・・

「たくさんな」

・・・助けられないのか・・・

「無理だな、これはおまえにとっては、過ぎ去った歴史上の出来事だ。手を出せるようなことじゃないんだよ」

「振り向いて見ろ、あのドアから出るんだ」

・・・なぜ、時空を移動するのにドアを使うんだ・・・

「そうだな、この世界の人間はこれが一番、違和感を感じないらしい。よくはしらんが昔聞いた話ではこの世界の猫型ロボットが時空の移動に使っていたらしい」

ドアを開けて中にはいるとそこは僕の研究室だった。

「おい、いったいどういうことだ」

声は聞こえなくなっていた。

いったい何なんだ。
僕は夢を見ていたのか。

窓の外は明るくなっている。

読みかけの雑誌は片づけられていた。

連中は僕を捕まえるのをあきらめたんだろうか。

DVDは無事かな。

探してみるとパソコンそのものがなくなっている。

かくしておいた複製もなくなっていた。

・・・さてどうしよう・・・

研究室の扉が静かに開いた。

そっと入ってきたのは水原君だった。

僕に気づいた彼女は誰もいないつもりだったらしく驚いた表情で僕の顔を見つめている。

「どうした、何かあったのか」

「先生こそ、どこにいってらしたんですか」

「いや、僕はずっとここにいたよ」

「嘘です、この前先生と話してから一週間、過ぎているんですよ」

「そんなはずはない」
「いや、そんな馬鹿なことがあるはずがない」

「そういえば結城君はどうした」

「彼も最近、学校に来てないみたいです。先生、何か知ってらっしゃるんですか」

「いや、知らない」

「そうですか、でも先生には一週間、まるで連絡が取れなかったので、大学が警察に捜索願を出していますよ」

「そうか、あとで顔を出しておこう。」

「大崎先生のことは君、知っているか」

「先生に連絡が取れなくなったあと、私が様子を見に行っていました」

「まだ、昏睡状態でしばらくの間は変化がないだろうと担当の先生がいってました」

「そうか、ありがとう。とりあえず生きているんだな」

「先生、私には何があったか教えてくれないんですか」

「そうだな、君はたぶん知っておいた方がいいだろう」

しばらくの間、僕の身に起きたことを彼女は静かに聞いていた。

「どうした、君は冷静に見えるがこんなとんでもない話を真実だと思っているのか」

「先生は嘘つきなんですか」

「たぶん、違う」

「君も僕もSFマニアなんだから僕が君に嘘をつくんだったら、もう少しリアリティのあるもっともらしい話をしていると思う」

「先生、私にも何か起こるんでしょうか」

「わからない、君は僕がいない一週間の間、無事だったんだからこの先も何も起きないかもしれない。しかし、もしかしたら君のところに僕が戻ってくるのを見張っている連中がいるかもしれない」

「私はこれからどうしたらいいんですか」

「水原君、これから何が起きるのか僕には見当がつかないが当分の間は普通に生活をする以外にはない」

「彼らが僕たちを襲うつもりなら、僕にはどうしようもない」

「先生、あのオキアミに似た生物は何だったんですか」

「大崎先生をあんな目に遭わせて、私もどうなるかわからないんでしょう」

「知っているんだったら教えてください」

「いや、僕は知らない」

《オリジナル》へ続く

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