2019年2月21日 (木)

人がいなくなった世界で繁栄する生き物たち。 世界の終わり方番外編

人がいなくなると生物相はどのように変化するだろう。
今回は、ごく一部だけの話だが、なかなか興味深い変化が起きることが想像できる。

ある日突然、人だけがいなくなった世界。
もしそのような世界が実現しても、地球上に生息する大半の動物たち、人に飼われている動物以外は、おそらく人がいなくなったことなど気にしないだろう。
しかし、蚊は喜ぶかもしれない。
何といっても人は、美味しい血を提供してくれると同時に蚊にとって最悪の虐殺者でもあるからだ。

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人は、殺虫剤を発明する遥か昔から、蚊を殺戮するべく、繁殖場所になりそうな池、河口、水たまりの表面などに油をまいてきた。
蚊の幼虫を窒息させるこの手段は、今でも広く使われている。

また、幼虫が成虫になるのを妨げるホルモンや、DDTの空中散布などが行われている。
これらの物質の散布が禁止されているのは世界中のごく一部にすぎない。

我々、人は蚊が生きていくには人の血が必要だと考えがちだが、蚊にとっては食料としての人の血が無くなっても特段困ったりはしない。
蚊は、ほとんどの哺乳類、爬虫類、そして鳥からだって血を吸うことができる。
蚊の雄の主食は主に花の蜜だが、血が大好きな雌も花の蜜を吸う。

この結果、蚊は受粉媒介者になって、人のいない世界では花が咲き乱れるんじゃないだろうか。

人がいなくなると、元々の蚊の繁殖地であった湿地が徐々によみがえるだろう。
そうなると蚊の卵と幼虫を餌にする淡水魚や、カエルが繁栄するようになるに違いない。

蚊がその辺中を飛び回っている世界、虫よけの薬が手放せない世界、そんな世界に人は住みたがらない。
しかし、人はいない。

世界の終わり方番外編です。

今回は、人のいなくなった世界で繁栄するかもしれない動物たちについて考えてみました。
資料は、「人類が消えた世界」アラン・ワイズマン著です。

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2019年2月 9日 (土)

温暖化がもたらす生物の絶滅その2  世界の終わり方番外編

もう一つ覚えている話があるんだが聞きたいかね。
「はい、もちろんです」
君は、知っていると思うが、福岡では概ね、立春の頃に梅が咲き始める。
しかし、今年はもう5分咲きになっているところがある。
これも温暖化が進んでいる証拠だという人もいる。

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さて、僕のイギリス人の友人は、家の近所の森で、毎年、子育てをしている鳥たちの様子が去年までとは違うといっている。

彼は博物学者で、自分で森に設置した1000を超す巣箱でひなを返す鳥たちを観察している。
毎年、巣箱に仕掛けた罠を使って確保した鳥たちの体重を調べて記録している。

彼が言うには、鳥たちは毎年、ほぼ同じ頃にアフリカから渡ってきて、森で繁殖するが、今年はどうも卵を産んでない鳥が増えているらしい。
雌鳥は体重が一定以上ないと卵を産まない。

森に、鳥たちの餌が不足しているのだろうか。

以前は、鳥たちがアフリカから渡ってきて、ひなを育て始める時期と森の木々に若葉が茂る時期はぴったり一致していた。
しかし、最近ではどうもひと月ほど、若葉の時期が早まっているらしい。
若葉が茂る時期とひなの子育ての関係だが、鳥たちは、若葉についているガの幼虫(芋虫)をひなに与えて子育てをしている。
ところが、ひと月すぎた森の若葉には、タンニンが含まれるようになって芋虫はいなくなってしまう。

つまり北帰行が遅れた鳥たちにはひなを育てる餌がないわけだ。

蛾は、若葉が芽吹く時期が早まってもそれに対応することができた。
しかし、アフリカにいる鳥たちには、何千キロも北の森の気温の変化などわからない。

鳥たちは、子育てする場所の気象の変化など知りようがないわけだが、それではどうやって北帰行の時期を決めているか。
それは昼の長さで決めている。

温暖化に伴って植物の成長は早まり、昆虫類もこの変化に対応したようだが、鳥たちは、気候の変化に対応できていない。

という具合に、友人は僕に鳥たちの窮状を教えてくれた。

体重が軽いままの鳥たちは、南に渡っていくが大半は戻ってこない。
温暖化は食物連鎖を途切れさせ、変化に対応できない運の悪い生き物を絶滅に追い込む。

BGM

資料として、別冊日経サイエンス 「温暖化危機 地球大異変part2」を使いました。

今回は、「世界の終わり方」の番外編です。
温暖化がもたらす影響について何回かに分けて書いていきます。 

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2019年2月 3日 (日)

温暖化がもたらす生物の絶滅その1  世界の終わり方番外編

先生は『沈黙の春』はご存知ですよね。
あれかい。半世紀ほど前に出た本で、農薬のせいで春になっても鳥のさえずりが聞こえてこないってやつだろ。

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先生は実際にそんな世界を見てこられたんでしょう。
うん、ただ僕の見た世界は、気候変動で、動物たちが子育てを失敗するようになった世界だ。

僕が経験した世界では、温暖化のせいで、ペンギンの数が大幅に減少していた。
南極というところは、温暖化の影響がほかの場所に比べて大きく出るところらしい。

ところで、南極では雪がほとんど降らないということは知っているかい。

聴いたことはありますがなぜなんですか。南極は真っ白なイメージで雪がたくさん積もっているような気がします。

その理由は、南極は海面が氷におおわれているので、水があまり蒸発できないからなんだ。

ところが、僕が見た世界の南極は、50年ほどの間に、最低気温が5度上昇した。
この結果、氷が解けて水が蒸発するようになったんだ。
だから雪が降り、それまで地面が露出していたところにも積もるようになった。

ペンギンは、地面の露出しているところに小石を集めて巣をつくり、そこに卵を産む。
もし、雪が積もっていて露出した地面がなければ、仕方がないので雪の上に巣をつくり、卵を産む.。

しかし、これがすごくまずい。
卵が雪解け水につかって腐ってしまう。

毎年の降雪量には、増減があるわけだが、長期的には降雪量は増えており、コロニーに参加するペンギンの数は明らかに減少している。

温暖化による生物への影響にはいろんなパターンがあり簡単には理解できない。

続く。

参考資料:別冊日経サイエンス 「温暖化危機 地球大異変part2」

参考にしたサイト:皇帝ペンギンの生態まとめ!ヒナはかわいいけど子育ては世界一過酷!?

今回は、「世界の終わり方」の番外編です。
温暖化がもたらす影響について何回かに分けて書いていきます。 

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2017年10月11日 (水)

世界の終わり方その2 第1話《全球凍結》

世界の終わり方その1 第8話《人がいなくなった世界》の続き

「見たまえ、あれが地球だ。
青く見えるかね。」

「いいえ、私の知ってる地球はあんな色はしていません。
あれはほんとうに地球なんですか。」

「そうだ。
あれは全球凍結といわれる凍り付いた地球の姿だ。」

「でも先生、地球は温暖化が進んでいたんじゃないんですか。」

「そう思っていた人は多かった。
僕も、地球の将来は金星のようになると思っていた。
でも、その結果がああなんだ。」

「あんな環境で人は生き延びていけるんでしょうか。」

「凍り付いてからどれくらいたっているのかわからないが、たぶん、生き残っている人類がいたとしても文明といえるようなものが残っているとは思えない。」

「でも、僕たちが戻る世界では、誰もそんな未来は想像していないだろう。
僕も君も、預言者にはならない。
僕は、相変わらずぱっとしない教員だし、君は、目立たない学生にすぎないと思う。
違うとすれば、結城君だ。
彼はなかなかユニークだ。」

10月の中頃、大リーグでは、ワールドシリーズの挑戦者争いが佳境に入り始めている。
毎年、今頃は晴れの日が続くことになっているのだが、何故か秋雨前線が頑張っていて、洗濯物を干すのに苦労している。

今日は、講義の予定が入っていないので、来春に発表する予定の論文の草稿を書く予定にしていたのだが、ビールを買って帰ってきたら留守番電話に想定外の連絡が残っていた。

BGM

核廃絶を訴えるヒバクシャ国際署名に協力しています。
http://hibakusha-appeal.net/index.html

この話を書くために参考にした本その1。

「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

2015年10月14日 (水)

世界の終わり方その1 第8話《人がいなくなった世界》

世界の終わりに向けてその2》の続き

世界の終わり方その1 第8話

「先生、米国政府はこの事態を予告されていたんでしょう。なぜ何も対策を取らなかったんですか。」
「君はどんな対策が取れると思うんだい。
あのばかでかいUFOを撃ち落とせばこの問題が解決すると思っているのかな。
攻撃を受けたらあの連中がしっぽをまいて逃げ出すと思うのかい。」

「米大統領はホワイトハウスに侵入した連中が壁を通り抜けて姿を消したところを目撃している。ただならぬ敵だということは認識しただろう。」

「安全保障会議の連中はもちろん対策を考えたに違いない。しかし、地球を放棄しろなんて要求を飲めるはずはないだろう。」

「米国はいつも物事は最終的に実力で解決しなければならないと考えている。」
「だから、すでに一度、米軍はUFOに対して実力行使を行っている。しかし、何の損害を与えることもできなかった」
「あのばかでかいUFOは、レーダーに姿が映らないし、米国の衛星もUFOの姿を捉えることができない。米軍は無人機を突入させたがUFOがあるはずの場所を通り抜けてしまった」
「あのUFOは僕たちの目には見えるのだが実体がないのだ。空に投影されている虚像に過ぎない」
「しかもその投影装置は、別の世界にあってこの世界の人たちは手が出せない」

「先生はそれだけわかっていて、しかも別の世界にも行けるのにこの事態をどうにかできないんですか」
「僕には、たぶん…」

「いなくなった人たちはどうなるんですか。」
「そうだな。自分の知る限りあの連中は、連れ去った人間たちの運命がどうなるかなんて気にしていない」
「あまり例えとしてはよくないかもしれないが、ひれを切り取ったあとて海に投棄した鱶の運命を人間が気にしないのと同じだと思う」
「一部は他の星で檻に入れられて見世物にされるかもしれないし、またほかの一部はどこかの星に放置されるかもしれない」
「この世界は終わりだよ」

「あの連中の上位者はこの世界ができそこなっているという判断を下したんだと思う」
「この世界の人間たちは、自分たちが住んでいる地球の環境を破壊しようとした。住み続けられなくなることを現実の問題として理解しようとしなかった。」
「君は知らないと思うが、米国は、1940年代後半から1990年代まで、放射性物質の詰まったドラム缶を海に投棄し続けた。この行為によって、プルトニウムやウラン、ストロンチウムが海に流れ出た。1990年代に投棄をやめるまでに、米国は何十万本ものドラム缶を海洋の50か所に投棄した。」
「米国だけではない。ロシア、中国、日本、ニュージーランド、ほぼすべてのヨーロッパの国々も放射性物質が詰まったドラム缶を投棄している」

「結局この世界は人間に任せておいては維持・継続できないと判断されたんだと思う。」

「誰もいなくなった後のニューヨークは、どうなるんですか」
「そうだな。まず、ニューヨークは高度に管理された都市なので、管理している人間がいなくなると、3日ほどで地下鉄が水没する」
「ニューヨークの地下鉄は下水管の下に作られている。地下には5000万リットル以上の水が溜まっている上に、トンネル内には一分間に二千五百リットル近い地下水が噴出しているところがある。」
「水没しないように強力なポンプを使って絶え間なく水をくみ上げているが、電気が来なくなるとポンプが停止し、30分ほどでトンネルが水浸しになる」
「そうはいっても、困る人間はすでにいない」

「2~3年経ったら、下水管やガス管などが次々に破裂し始め、ひびが入った舗装道路から草木が芽を出す」

「5年~20年後には木造住宅、続いてオフィスビルが崩れ始めるだろう。そのころには枯れ葉や枯れ枝が辺り中に溜まっているだろうから、雷でも落ちればあっという間に街は炎に包まれるにちがいない。」

「先生、私たちがニューヨークに来た時、虚空に侵食されているのを見ましたよね。」
「うん、あれには驚いた。しかし、あれは真実ではないと思う。多分心理操作だ」
「私たちも幻影を見たんですか」
「そうだと思う」

「これからどうするんですか」
「そうだな、もうこの辺りには人の気配がない。とりあえず、日本に戻ろう。」

「日本は無事なんですか」
「いや、僕たちがやってきた日本はもう存在しない」

続く

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

2015年9月23日 (水)

世界の終わり方その1 第7話《世界の終わりに向けて その2》

世界の終わりに向けて》の続き

世界の終わり方その1 第7話

「先生、ここは本当にニューヨークなんですよね」
「そうだよ、僕たちはニューヨークのセントラルパークという大きな公園の中にいる」

「どうやって、先生が私たち二人をここに連れてきたのかわからないんですが、日本を出たときは夜の9時過ぎでしたよね」

「そうだな」

「どうして、ニューヨークも夜なんですか。時差を考えるとここは朝のはずなんですよね」

「そうだな、座標の選定を間違えのたかもしれないな」
「少し歩いてみよう。公園から出れば何かわかるだろう」

しばらく歩くと大きな通りに出た。
5th Aveという標識が見える。
どうやらセントラルパークの東側の通りに出たらしい。
相変わらず人影はないし、車も動いていない。
しかし、ここでも街灯は点灯していた。

南側は漆黒の闇に包まれていた。
そこでは街灯も消えているようだ。
確か僕の記憶ではそこはビジネス街でビルが林立しているはずなのだが、何も見えない。
しばらく二人は立ち止まって、漆黒の闇を見つめていた。
「先生、あれは…」
「何ということだ」
二人は同時に、漆黒の闇の正体を知った。

ニューヨークのビジネス街があるべきところには、果てしのない闇が広がり、そこには星の光が瞬いていた。
大都市の半分が切断されて虚空に侵食されている。

「こんなやり方は見たことがない。なんてことをやらかしたんだ」

「水原君、引き上げよう」

「こんなことになる前のニューヨークを見に行こう」

「先生、時間をさかのぼれば、こんな事態にならないようにできるんですか」

「いや僕の力では到底、無理だ。しかしなぜこんなことをしてまで、僕たちの世界を終わらせようとするのか、奴らが何を考えているのかはわかるかもしれない」

「それに、いなくなったニューヨークの人たちがどうなったか知っておく必要はあるだろう」

僕たちは二日前のまだ、平穏だった時のニューヨークの朝に、移動した。

5th Aveを北に向かって歩いていくとホットドッグ屋が店を出していたので、腹ごしらえをした。
その後で、メトロポリタン美術館に向かった。

二人とも特に美術品を見てみたいという心境ではなかったがUFOが空を覆い尽くす時間までの暇つぶしにはなるだろう。
(作者注、メトロポリタン美術館は、ストリートビューで中をのぞくことができる。)

昼前に外へ出てみた。
あたりが薄暗い。

見上げなくてもわかっている。
あのばかでかいUFOだ。

声が頭の中に響きだした。
「先日予告しておいた通り、皆さん方には本日を持って地球から退去して頂く」

街中を歩いていた人たちは慌てふためいて、建物中に避難しようとしている。
しかし、人々は消えていった。
車を運転していた人は、動いている車の中から消えた。
しかし、車は暴走せずに静かに停車している。

メトロポリタン美術館に戻ってみたが見学していた人も美術館員も消えていた。

BGM

続く

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

2015年8月26日 (水)

世界の終わり方その1 第6話《世界の終わりに向けて》

オリジナル》の続き

世界の終わり方その1 第6話

研究室の扉が開いた。

静かに入ってきた大学の警備員が驚いたような目つきで僕たちを見つめていた。

「先生、申し訳ありませんがこの建物はもうすぐ閉鎖の時間ですのでお帰り願えませんでしょうか」

外が暗くなっているのには気がついていたのだがもうそんな時間になっていたのか。

「水原君、とりあえず出よう」

警備員の男が不審そうな声で言った。

「先ほどからテレビでアメリカに何か変わったことが起きていると言ってますがご存じですか」

「いや、この部屋にはテレビはないし、何も知らないが何かあったのか」

「そうですか、僕もよくわからないんですがニューヨークが消えたといってるみたいです」

警備員の男は早く巡回を終えてテレビのある詰め所に戻りたくて仕方ないみたいだった。

「わかった、僕たちは引き上げるから君も仕事を続けたまえ」

男は急いで部屋を出ていった。

「水原君、とりあえずここを出よう」

「先生、どうするんですか」

「いやまだ何も考えてはいない、歩きながら考えることにしよう」

二人は地下鉄の駅まで歩きながら会話を続けた。

「連中は今でも僕たちのこと監視しているに違いない。君はどうしたい」

「先生、ここまでわかったからには私は一人でいるわけにはいきませんわ」

「そうか、ではとりあえず僕がついていくから必要なものを取りに君の部屋へ行こう」

「先生!」

「逃避行をするのにいるものはないんですか」

僕は思わず彼女に笑顔を向けた。

「そうだな、僕にとってもこれが女性と一緒の初めての逃亡ということになるんだがたぶん大丈夫だろう」

「今まででも逃げるときには身一つで何も持ち出したことはないから」

地下鉄で二駅を乗って彼女のアパートに着いた。

「いいかい、申し訳ないが戸は開けておいてくれ、それに携帯は持ってこないでくれ」

「意味はわかるだろう」

「先生よくわかってますよ」

彼女はすぐに小さなバッグを一つもって出てきた。

「おいおい、本当にそれ一つで大丈夫なのか」

「あら、先生、私は旅行に行く訳じゃないんでしょう。先生と同じで大丈夫だわ」

「困った奴だな君は」

二人は近くの公園に向かって歩いた。

かなり遅い時間になっていたが公園にはまだ人影があった。

「いいかい、少し気分が悪くなるかもしれないよ」

「大丈夫です」

一瞬周りが暗くなり、すぐに元へ戻ったような気がした

相変わらず周りは薄暗いが人影は見えない。

公園の向こうには灯りがみえない。

「確かに変だな」

「先生、何がですか」

「ここは確かにばかでかい公園だけど800万人から住んでいるはずの大都市なんだよ」

「もし全ての人が一斉にいなくなったとしても街の灯りがなく完全な暗闇というのは変だ。そのうえここだけ街路灯がついているようだ。」

続く

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

2015年8月15日 (土)

世界の終わり方その1 第5話 《オリジナル》

《拉致》の続き

世界の終わり方その1 第5話

・・・教えてやれよ。・・・

頭の中に声が聞こえた。

「お前はあの連中に襲われて逃げるときに連中の脳を走査して、心を読んだじゃないか」

「今は現実から逃げる時じゃないぞ。記憶は戻っているんだろう」

・・・しかし、彼女が知りすぎるとまた連中に襲われるんじゃないか・・・

「どっちにしろお前がここで彼女を離せば連中に消されるのは時間の問題だろうな」

「それに彼女は候補者だ」

・・・なんだって・・・

「連中の上位者はそろそろ気がつく頃だ。決断しろ」

彼女は僕の目をじっと見つめていた。

一瞬のことだったが頭の中での会話に気がついたかもしれない。

「水原君、オキアミのことも含めて全てを話しておこう」

「大崎先生が見つけたあのオキアミはこの世界に住んでいるオキアミと変わらない普通の生物だ」

「ただ少しばかり違うのはこの世界に隣接している平行世界の生き物だということだ。この世界とは少しばかり物理定数の違う世界の生き物なんだよ」

「だからこの世界の生物とは異なる化学反応の仕方をするんだよ」

「どうしてそんな生き物がこの世界の海に住み着くようになったかだが、君も想像がつくように平行世界間の壁は厚くて破られることはない」
「同じことをなじみのある言葉でいうとエネルギー保存の法則が該当する」
「つまり、平行世界の壁を超えることができないというのはこの世界全体でエネルギーが増えたり、なくなったりしないというのと同じなんだ」

・・・

「それじゃなぜなんですか」

「水原君、僕にも理解はできないがその壁を破って平行する世界の間を移動できる芸を持っているやつがいるんだよ」

「そいつが平行世界間の壁を破って移動したために、壁がふさがるまでのわずかな間に時空の穴を通って別世界の生物がこの世界に住み着いたらしい」

「それが先生なんですか」

「すまないがどうやらそうらしい」

「わかりました。それであの人達はこの世界をどうするつもりなんですか」

「連中は職業上の義務とやらにしたがって、この世界を閉じるつもりらしい」

「それは先生がここにいるからなんですか」

「いや、違う」

「連中はこの世界の閉鎖に来て、偶然、僕を発見したんだろう」

「僕を専門に捕まえにくるような奴らは今回、来たような連中とはひと味違う芸を持っている」

「先生はさっきから何度も平行世界の実在をいわれていますけどその世界には私もいるということですか」

「普通はそうだ」

「それはもしこの世界で私が死んだとしても別の世界では生きているという意味ですか」

「もう一度いうが普通はそうだ」

「先生はっきり言ってください。普通でない場合があるんですか」

「それは僕がこの世界で死ねば平行する全ての世界で僕が消滅するという意味だ」

「先生は他の世界でも私と一緒にいたんですか」

「記憶がない」

「えっ!」

「君は僕と同じでオリジナルだ」

「君は無限に広がる平行世界の中でここだけに存在している」

「普通、平行世界ではそこで起きるあらゆる事象によって、分岐が起きる」

「オリジナルは世界の分岐を起こさず、逆に世界を収束させてしまう」

「だから君や僕の様な人間は世界の安定を乱す存在だ」

「あの連中はそういう人間を探し出して消去しようとしている」

「でも先生、それが本当なら、私は今まで、あの人達に気がつかれずにどうやって育ってこれたんですか?」

「そうだな、それだけ君が特別な存在だということだ」

「僕も先ほどまで僕と同じような人間が他に存在することに気がつかなかった」

「今回のような出来事のおかげで、僕が覚醒して、君に反応したということだろう」

「先生、それは私も先生と同じような超能力が使えるという意味ですか」

思わず彼女の目を見つめた。

「いやはや、君はどうしようもない楽天的な娘だな」

「君は僕にとっては特別な人間ではあっても、君が育ってきたこの世界ではごく普通の女の子だ。超能力なんて使えるわけないだろ」

「なんだ、つまらない」

「さて君をどうしたものかな」

「あら、先生、私を守ってくださるんじゃないんですか」

「そうしたいものだが僕もこの世界では単なる逃亡者に過ぎない」

「水原君、君が僕の言うように、本当にオリジナルなら先では僕の助けを必要としないようになるだろう」

「しかし、僕と一緒にいれば、無限の世界を未来永劫逃げ回ることになる」

「それでもいいのか」

「僕の考えでは連中は君を消去しようとは考えないに違いない」

「連中はこの失敗した世界での唯一の収穫だと考えて、君を連れて行こうとするだろう」

「先生、私はどこへ連れて行かれるんですか」

「外の世界だ」

「別の平行世界という意味ですか」

「いや違う、外の世界だ」

「平行世界とは違う別の世界があるということですね」

「そうだ」

「先生はその世界に行ったことがあるんですね」

「僕は君と同じように、何も知らずに普通の世界に育って、ある日、連中に拉致された」

「そのあと、ずっと時空管理官をしていた、あのUFOの連中と同じ仕事だ」

「そしてある時、《声》を聞いた」

「その《声》は覚醒を求めていた」

「僕はもちろん時空管理局に報告した」

「時空管理局は《声》を聞いた局員を全て把握していて、報告の遅れた連中を全て降格した」

「しばらくたって、航時機を使って時を遡りすぎた奴を追跡している最中にまた《声》を聞いた」

「そのときに僕が時空管理局に、マークされていることに気がついたんだよ」

「すぐに報告を入れたんだが、連中はしつこく聞くんだ」

「《声)は報告したこと以外にも何か言っただろう」

「あんまりしつこいので、『あんた達は馬鹿だといってましたよ』と言ってやった」

「即座に降格ということになったな」

「その日の夜寝ているときにまた《声》を聞いた」

「そのあとすぐに、誰かの手引きをうけて逃走した」

「先生、よく逃げられましたね」

「いや、連中も何か他の件で忙しかったらしく僕にかまっていられなかったらしい」

「それ以来、逃亡生活ですか」

「いやそういうわけでもない。連中から姿を隠すには色々なテクニックが必要でうまくいっている間は隠れている必要はない」

「先生の話を聞いているとその時空管理局というのには抵抗勢力があるみたいですね」

「僕にもわからないことはたくさんあるがその中でも一番不思議なことだな」

「連中はこの世界を含めて、全ての平行世界を管理しているはずなのに、僕や君のような人間の存在を補足できない」

「まるで宇宙の中に別の意志が働いているみたいだ」

「先生、宇宙というのは無限に広いんでしょう」

「たぶん、管理局の人たちの想像しているよりも世界は広いんだわ」

続く

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

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2015年8月 5日 (水)

世界の終わり方その1 第4話 《拉致》

 《事件》の続き

世界の終わり方その1 第4話

午前中は最近発売されたフィジカル・レビュー誌の平行宇宙に関する論文を読んでいた。

ふと窓を見ると昼間だというのに薄暗くなっている。

いやな予感はしたのだが仕方がないので、窓を開けて空を見た。

そこには例のUFOがいた。

やれやれと思いつつ振り向くと予想通り、部屋の隅に男たちが立っていた。

「先生、我々についてきてもらえますか」

「いやと言ってもいいのか」

「無駄ですね、先生には特に注意するように指示を受けていますので、この近辺の時空は全て封鎖しています」

「そうかな?」

世界が暗転した。

男達の会話が聞こえる。

「記憶を失っているんじゃないのか」

「いや、そのはずなんだがいずれにしても逃げられるはずがない」

「やつが記憶を取り戻していたら、まずいぞ」

「今までだってこれぐらいの包囲網を平気で逃れていたんだろう」

「いや、やつは自分が何者か解ってないはずだ」

不思議な会話が行われている。

・・・いったい何が起きているんだ。僕はなぜこんな状況で落ち着いていられるんだ。

UFOを見る直前からの僕はおかしい・・・

・・・まるで僕は彼らの正体を知っているみたいだ・・・

「あわてるな。  説明してやるから落ち着けるところに移動しようじゃないか。  今来ている連中は雑魚だ。  たいした連中じゃない」

頭の中に、声が聞こえた。

「誰だ!」

「黙るんだ。俺のいうことを聞いてゆっくり歩け。ほら、向こうに明るいところが見えるだろう」

それは扉だった。

開けて中にはいるとそこは少し古めかしい酒場だった。

・・・ここはいったいどこだ・・・

「20世紀前半のアメリカ、シカゴだよ。カウンターで酒を頼むんだ!」

・・・こんなところに日本人がいたらあやしまれるんじゃないのか。・・・

「つまらない心配をするな、おまえは周りの連中には白人にしか見えないし、言葉も周りの連中と同じだ」

「お前に気がつくやつはいやしない」

訳のわからないまま、バーテンに酒を頼んだ。

「いいか、会話は頭の中だけで、行う。声には出すなよ」

「店の連中に話しかけられても自然に振る舞え」

「おまえを追跡している連中はあらゆるところに網を張っているからな」

・・・ここは安全なところじゃないのか、そういっただろう・・・

「安全なところなんかどこにもない。ここは比較的安全だということだ」

・・・今まで、子供の時から、特別、変わったこともなくすごしてきたのに、なぜ急に訳のわからない連中に追いかけ回されなくちゃならないんだ・・・

「それはおまえがそう思っているだけだ」

「おまえは覚えていないだろうが遙か昔から連中に追いかけられているんだよ」

・・・捕まるとどうなるんだ・・・

「さあな。たぶん、原子に還元されるんじゃないか」

・・・今まで捕まったことはないのか・・・

「あるよ。何度も原子に還元されてる」

・・・何だって、どういうことだ・・・

「それよりここを出よう、もうすぐ、ここでパニックが起きる」

・・・死人が出るのか・・・

「たくさんな」

・・・助けられないのか・・・

「無理だな、これはおまえにとっては、過ぎ去った歴史上の出来事だ。手を出せるようなことじゃないんだよ」

「振り向いて見ろ、あのドアから出るんだ」

・・・なぜ、時空を移動するのにドアを使うんだ・・・

「そうだな、この世界の人間はこれが一番、違和感を感じないらしい。よくはしらんが昔聞いた話ではこの世界の猫型ロボットが時空の移動に使っていたらしい」

ドアを開けて中にはいるとそこは僕の研究室だった。

「おい、いったいどういうことだ」

声は聞こえなくなっていた。

いったい何なんだ。
僕は夢を見ていたのか。

窓の外は明るくなっている。

読みかけの雑誌は片づけられていた。

連中は僕を捕まえるのをあきらめたんだろうか。

DVDは無事かな。

探してみるとパソコンそのものがなくなっている。

かくしておいた複製もなくなっていた。

・・・さてどうしよう・・・

研究室の扉が静かに開いた。

そっと入ってきたのは水原君だった。

僕に気づいた彼女は誰もいないつもりだったらしく驚いた表情で僕の顔を見つめている。

「どうした、何かあったのか」

「先生こそ、どこにいってらしたんですか」

「いや、僕はずっとここにいたよ」

「嘘です、この前、先生と話してから一週間、過ぎているんですよ」

「そんなはずはない」
「いや、そんな馬鹿なことがあるはずがない」

「そういえば結城君はどうした」

「彼も最近、学校に来てないみたいです。先生、何か知ってらっしゃるんですか」

「いや、知らない」

「そうですか、でも先生には一週間、まるで連絡が取れなかったので、大学が警察に捜索願を出していますよ」

「そうか、あとで顔を出しておこう。」

「大崎先生のことは君、知っているか」

「先生に連絡が取れなくなったあと、私が様子を見に行っていました」

「まだ、昏睡状態でしばらくの間は変化がないだろうと担当の先生がいってました」

「そうか、ありがとう。とりあえず生きているんだな」

「先生、私には何があったか教えてくれないんですか」

「そうだな、君はたぶん知っておいた方がいいだろう」

しばらくの間、僕の身に起きたことを彼女は静かに聞いていた。

「どうした、君は冷静に見えるがこんなとんでもない話を真実だと思っているのか」

「先生は嘘つきなんですか」

「たぶん、違う」

「君も僕もSFマニアなんだから僕が君に嘘をつくんだったら、もう少しリアリティのあるもっともらしい話をしていると思う」

「先生、私にも何か起こるんでしょうか」

「わからない、君は僕がいない一週間の間、無事だったんだからこの先も何も起きないかもしれない。しかし、もしかしたら君のところに僕が戻ってくるのを見張っている連中がいるかもしれない」

「私はこれからどうしたらいいんですか」

「水原君、これから何が起きるのか僕には見当がつかないが当分の間は普通に生活をする以外にはない」

「彼らが僕たちを襲うつもりなら、僕にはどうしようもない」

「先生、あのオキアミに似た生物は何だったんですか」

「大崎先生をあんな目に遭わせて、私もどうなるかわからないんでしょう」

「知っているんだったら教えてください」

「いや、僕は知らない」

続く

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

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2015年7月25日 (土)

世界の終わり方その1 第3話 《事件》

 オキアミの続き

世界の終わり方その1 第3話

深夜になって家に帰りついた僕は、疲れた体に鞭を打ちつつ、ビールをジョッキに注ぎながらパソコンのスイッチを入れた。

ネットでニュースを読み、世界中の至る所にUFOが現れたのを知った。

ニュースではホワイトハウスで開催されていた国家安全保障会議(NSC)に、黒ずくめの二人の男達が侵入したと伝えていた。
アメリカ政府のだれか、おそらく最高幹部の一人が情報をリークしたらしい

二人組は米大統領を含む米政府の高官たちに向かって、地球からの速やかな退去を勧告し、その後、ホワイトハウスを警護するシークレットサービスの連中を相手にせず、行き止まりの廊下を歩いて壁の向こうに消えるという離れ業を演じたと伝えていた。

・・・日本政府からの連絡を受けて、対策を取っていたはずだが米国自慢の軍事力は何の役にも立たなかったらしいな・・・

あのばかでかいUFOは実体を持っていないから、事前に発見できないのも無理はないし、どっちにしろ人類が相手にできるような連中じゃないだろう。
そんな気がした。

ほろ酔いの頭で、昨日からの出来事を思い出してみた。

あのUFOはなぜ僕の住んでいる街に現れたんだ。

偶然とは思えない。

しかし、そうすると何か意図があったんだろうか。

十分な調査能力を持っているはずの連中がこの街に世界で最初に来た理由はいったい何だったんだろう。

 もしかして、今日の昼、大崎先生のホテルの部屋で見たあの連中と何か関係があるんだろうか。

まさか、同じ連中じゃないだろうな。

大崎先生は約束の時間に店に現れなかったので、僕は学生達に、食事を済ませて、午後の講義に出るようにいい、店を出た。

悪い予感を振り払いながら、大崎先生が泊まるといっていたホテルまで行った。

フロントで訪ねると大崎先生はしばらく前にチェックインして、部屋に行ったがそれきり出てこないということだった。

僕は悪い想像を押さえながら、ホテルのマネージャーと一緒に先生の部屋まであがっていった。

ドアは完全にしまっておらず、隙間からは倒れている先生の姿が見えていた。

ドアを開けてすぐ、マネージャーに「医者を呼べ、急げ」と告げた。

 「先生、何があったんですか」倒れている大崎先生の頭に手を当てた。・・・えっ、なんだこれは・・・どうやら僕の眼の前で、先生の身に起きた出来事が再現されているらしい。

 先生は部屋に入ってすぐに、二人組の男に襲われ、荷物を奪われた。

「お前たちは何者だ、何をするんだ」

男達の一人が言った。

「大崎先生、申し訳ありませんがあなたが見つけたものは間違ってこの世界におかれたものなんです。
僕たちはこの世界に矛盾が起きないように回収してまわっているんです。
お気の毒ですがあなたがいろいろと調査されたことは全て実際にはなかったことなので、お忘れ願います」

そういって男達の一人が取り出した奇妙な機械が出す振動によって大崎先生は倒れた。

その後、彼らは先生の荷物を調べた後で、壁の中へ持ち去った。

 僕はすぐに悟った。
研究室に戻らなければいけない。

でもこの状況では・・・。

とりあえず、大崎先生の命を救うのが一番だ。

先生はすぐに大学病院の集中治療室へ収容された。

それから、僕は警察で事情聴取を受け、要領の得ない説明をした後、夜遅くまで、病院の大崎先生のそばにつめていた。

 
 やはり、あの二人の男達はUFOから降りてきた連中だ。

たぶん、研究室は連中にかき回されているだろう。

学生達は無事だろうか。

まんじりともせずに、朝を迎え、研究室に急いだ。

 研究室に入っても何も変化があるようには感じられない。

検査機器を調べてみると、大崎先生が残していった試料の全てが消滅していることが解った。

・・・連中は地球の機械には関心がないらしいな。

そういう指令は出てないんだろう。

僕ならどんな機械でも一通り調べるんだが。

奴らは少し人間をなめているみたいだな。

・・・

もう少しすれば学生達のでてくる時間だ。
彼らに、何も起きてなければいいんだが。

デスクの前の椅子に座ってみてから、パソコンに気がついた。

もしかしてこれの中にDVDが残っている!

DVDはそのままになっていた。

これは有機物ではないし、単なる情報にすぎないから、検知する必要を感じなかったんだろうか。

あり得ないことだな!

連中はこのミスにいずれ気がつくだろうから、複製を造っておこう。

どこに隠しておけばいいのかな? 

僕と連中の知性の戦いというやつだな。

学生が部屋に入ってきた。

結城君も、水原君もいつもと何も変わらないように見える。

「先生、昨日はあれからどうなったんですか。大崎先生はどうしたんですか。」

「君たちの質問は極めてもっともだ。答えるからとりあえず椅子に座りなさい!」

二人にホテルで僕が経験した出来事を細大漏らさずはなした。

このSF好きな娘と理系のくせにSFを知らない男の子はなかなかおもしろいことを言い出して僕を驚かせるのが得意なのだ。

「さて、君たちの意見を聞かせてくれ」

「先生は超能力の持ち主なんですね! それって、ポスト・コグニッションですよ」

「水原君、何のことか解らない。解るように説明してくれ」

「先生も、SFマニアのくせに、これぐらい知らないんですか」

「仕方ないわね。ポスト・コグニッションというのは、自分が触れたものの過去を見る能力のことです。先生の場合はぴったり当てはまると思うんですけど」

「僕にそんな能力があるとは思えないが、あの連中はこのことに気がつく可能性はあるだろうか?」

「先生!」

「何だ、結城君」

「先生は自分の見られた幻覚を事実だと思っていられるようですがそのことをだれかに話しましたか?」

「いや、君たちだけだ」

「それはよかったですね。確かに僕たちの周りには不思議なことが起きているみたいですが誰も信じてくれないでしょう」

「僕もそう思っている。僕は確かにSFおたくだが超能力の実在を本気で信じているわけではない」

「しかし、僕が見たのは幻覚ではないだろう」

「幻覚にしてはあまりにもリアルだった。僕が超能力者でないのならだれかが僕の頭に干渉して、幻覚を見せたのだと思う」

「それはだれか、私たちに真実を伝えようとしているものがいるという意味ですか」

「僕には解らない」

「先生、もし先ほど言われたように、宇宙人、宇宙人とは限らないみたいですけど、私たちよりも技術が進んでいるなら、この部屋を監視していると言うこともあるんじゃないですか」

「もちろん、そうだろう。しかし、それが本当なら、連中はこんな事態になる前に問題を解決できていたはずだ」

「考えても見ろ。彼らが本当に銀河連邦の役人とやらで、銀河系のあちらこちらに、高速道路を造っているんなら、未開の星に突然やってきて、脅迫同然のやり方で、立ち退きを求めたりはしないだろう」

「連中は何かまるきり、違う次元のことを考えているに違いない!」

「先生、それはどういうことですか」

「今のところは解らないが連中が本当に我々がじゃまだと考えているなら、我々の想像以上に簡単に我々を排除できると言うことだよ」

「あのオキアミに似た生物はいったいなんですかね」
と結城君が言った。

「まるで解らないが、大崎先生が襲われたところから考えて、僕たちはこの一連の出来事の核心に近いところにいるんだと思う」

「僕たち3人はいつでも襲われて記憶を消される可能性があると思う。記憶だけではないかもしれない」

「連中がその気になったら、どうしようもないとは思うがとりあえず、君たちの講義が終わったら、もう一度この部屋に集まるよう、お願いしたい」

結城君は部屋を出ていくとき、「ボン・ボヤージュ」と言った。

続く 《拉致》

この話を書くために参考にした本その1。
「人類が消えた世界」
ある日突然、人だけが消えてしまった世界にどのように自然が戻ってくるのかが具体的に書かれています。

この話を書くために参考にした本その2

小松左京「果しなき流れの果に」

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